2012年2月17日金曜日

「人気度ランキング情報の信憑性」とは?


商品購入時の情報として、人気度ランキング情報が氾濫している。ネット情報の信憑性はあまり高くなく、消費者も参考情報と位置づけているようだ。大手出版の一流ゴルフ雑誌の人気度ランキング情報は信憑性が高いのか?
ゴルフ雑誌の特集では、人気プロや人気シャフトの使用率が人気度のバロメーターになっている。[人気ドライバー=高性能ドライバー]とする情報が発信されているが、果たして信頼性の高い情報なのだろうか。また、日本国内では人気のUS商品が米国の2,3倍の価格で販売されているのは何故だろうか?

アメリカの消費者は、日本ほど「人気度」に踊らされることが少なく、商品の本質(cost performance)を見極めようとする意識を持っている。この意識をアメリカ人は、「ディベート教育」を通じて学校教育で育んできた。「ディベート」とは、論理的思考(Logical Thinking)と批判的思考(Critical Thinking)の鍛錬に有効な働きをする。論理的(批判的)思考プロセスを習得することにより、「物事の本質」を見極めることを可能にする。
ところが、日本は小学校から大学まで正解のある問題を解く事を教える教育であり、「ディベート教育」は推進されてこなかった。この為、一般的な日本人は「論理的批判的思考」に欠ける面がある。

今、橋下徹大阪市長と有識者の「ディベート」が話題になっている。大学教授を始めとするインテリ有識者の知的レベルの低さが露呈した感があるが、問題は有識者に米国の中学生以下の「ディベート理解度」と「思考力」しかなかったことにある。日本では「ディベート」を単に賛成か反対かを論議する場か、屁理屈を戦わせる場と捕らえる傾向にあり、論理的思考に基づく「ディベートの本質」を理解していないことにある。この為、感情的な反対論を繰り返し「橋下徹市長」の論理力に打ち負かされ醜態を晒す結果に終っている。

ディベート力は、政治家の能力を見極める方法でもある。
今年、アメリカは大統領選挙の年で、現在共和党の予備選挙が行われ、「ディベート」が頻繁にテレビで放映されている。大統領選挙が近づけば、「大統領VS候補者」のディベートが行われる。
国民は放映される「ディベート」を視聴し候補者の考え方や思考力や反論の瞬発力などを見定め最終判断を下すことになる。「ディベート」では、相手の議論に反論できなかった時「黙示の同意(drop)」と見なされる。また、反論機会に反論を行わなかった時は「その議論に異論はない」と見なされる。この為、ディベートに勝利するには、知識力、アピール力、論理的思考力、頭の回転の速さなどリーダーとしての資質の高さが要求される。

アメリカの「ディベート教育」は、論理的思考力、分析力、洞察力、質問力、問題解決力を鍛えることに重きが置かれている。この教育により、アメリカ人は常日頃から[物事を自問]する習慣を身につけている。この為、ゴルフ用品などの商品情報や宣伝広告を冷めた眼で見る批判的思考(Critical Thinking)が訓練され、マスコミの情報に踊らされことが少ない。
そして重要なことは、この[論理的批判的思考]がアメリカのマスメディアの根底に流れるひとつの「思想」となり情報を伝達する仕組みとして機能していることである。

日本のメディアは「論理的批判的思考」が欠如している。例えば、日本の大手メディアの報道は、原発報道で明らかになった様に政府発表を報告するのが習慣化している。日本ではこうしたメディア報道に疑問を持つ国民は少なく、NHKや大手新聞の報告報道を鵜呑みにする傾向がある。
アメリカでは大手新聞社やTV局が横並びの同一内容の報道が流れた時Spin Controlされた情報」と揶揄される。政治家の一方的な政策を発表するスポークスマンを「Spin Doctore」ホワイトハウスや政治家のプレスルーム(会見場)を「Spin Room」と呼んでいる。
Spin」とは政治的な「情報操作」のことである。
米国の良識あるジャーナリストは、政府発表の情報は論理的な矛盾がないか。隠された真実を洞察し、情報を分析し「Spin」された情報を掴まされない努力を行う。そのために独自の取材に基づいた情報を検証し記事を発表している。だから、日本の様な横並び記事(情報操作された)が掲載されることは非常に少ない。

日本のマスメディアの報道姿勢は、政治報道に限らずゴルフ業界を始めとする商業分野にも蔓延している。
大手のゴルフ雑誌に踊る「人気ランキング情報」は、雑誌社による独自の科学的な検証に基づく記事が掲載されている訳ではない。また、中立の専門機関のデーターや研究成果が発表される訳でもない。雑誌社の特集が企画されると、メーカー各社から支給されるPR記事(商品情報)を入手し編集掲載している。独自の取材や検証が行われることは皆無であり、まして商品を批判する記事が掲載されることは無い。
本来、中立な立場でコメントを発信するべき専門家や評論家はメーカーや雑誌社と契約関係にあり、スポンサーの不利益になる言動を発することは無い。つまり、スポンサーの意向を反映した「Spin情報」に基づき「人気ランキング情報」が発表されている。そして、消費者は「情報操作」に踊らされ高額商品を購入させられている。

一方、アメリカではこうした人気を煽る特集が企画されることは少なく、商品の性能を比較する時は雑誌社は自社の名誉をかけて独自の検証を行う。ドライバー性能を検証するときは、ロボット試打機やランチモニターを使用した科学的な独自の検証を行い発表する。読者は雑誌社が如何に公平なリポートを掲載するか「論理的批判的思考」の視点から検証する。こうした厳しい消費者の視点をマスコミに働く人間は意識しているから、人気を煽る「情報操作」に加担することはしない。

橋下氏の登場により、問題定義→提案]する論理的思考(ディベート能力)の重要さが認識されることにより、Spin情報」を掴まされな「賢い思考力]を一人ひとりが身に付ける切っ掛けになる様な気がする。