2012年6月13日水曜日

[飛ぶアイアン]を正当化する[空気感]


 「飛ぶアイアン」とは、ロフト角の超ストロング化した商品である。欧米社会にはロフト角の超ストロング化を正当化する[空気感]は存在しない。
ところが、日本のゴルフ業界には『ものすごく飛ぶアイアンです』『2番手違う飛距離の飛ぶアイアンと「飛ぶアイアン」をブーム化する[空気感]が流れ、[Gimmick商品]を正当化するマスコミの情報操作が行われている。

日本社会には巧妙に真実を隠蔽し「情報操作」を容認する社会構造がある。「情報操作」が日常化した社会では、「情報の本質」を覆い隠すことに最大限の努力が発揮される。
原発行政の情報もツワーバスの実態も、東電も、事故があって始めて「真の情報」が明らかになる。こうした隠蔽型社会は、利益集団(国家や企業)に都合の悪い情報(関西電力の情報など)は隠蔽され、都合の良い情報だけが巧妙に発信される。恒常的な情報操作がもたらす怖さは国民の思考力・想像力を低下させ、情報隠蔽を無関心にさせ、操作された情報を信じマインドコントロールされることにある。日本の情報操作の構造は、原発再稼動などの政治行政に限らずあらゆる分野に浸透しており、ゴルフ業界も例外ではない。

ゴルフ情報誌の特集記事は全くの虚偽情報ではないが、巧妙に仕組まれた情報操作が背後にある。
高価格シャフトに関しても、本質を考えれば明らかな様にボールがヒットするのは[ドライバーヘッド]であり、[へッドの働き]をサポートするサブ性能でしかない。それにもかかわらず、あたかも、容易に高弾道が実現する[魔力]が高弾道シャフトにあるかのような錯覚情報をゴルフ情報誌は発信し続けている。
将来的にコンピュターチップの内蔵されたシャフトが開発されれば「魔力」を秘めたシャフトも誕生するだろう。現時点で重要なことは、高価格シャフトの宣伝に一喜一憂するのでなく[シャフト選択の基本条件]を検証することだろう。これらのシャフトの基本仕様[フレックス/重量/トルク/キックポイント]を理解した上でスイング動作の分析・正確なヘッドスピードの計測身体能力の査定の検証を行うことにより、適正なシャフト選択が可能になる。
新たな流行の[飛ぶアイアン]も全く同様の現象が起きている。特に問題なのは、飛ぶアイアンの[素材とロフト角の精度]にある。
飛ぶアイアンの素材は[Forgedアイアン]が選択されている。ところが、Forgedアイアンの[素材]は欧米と日本では異なるのをご存知だろうか?
日本のForgedアイアンは軟鉄と呼ばれる[軟鋼:マイルドスチール]が使用され、欧米では[カーボンスティール]が使用されている。マイルドスチール(炭素量0.05~0.25%)とカーボンスチール(炭素量0.3%以上)は、鉄の中に含まれている炭素量の差にある。炭素の含有量は「粘りや硬さ」に違いが生じ、低炭素の軟鉄は柔らかく、カーボンスチールは硬い特質がある。これは科学的に検証した時に導き出される結果であり、実際に[手応え感]の違いを感じることの出来る[人間]は限りなくゼロに近い。

如何に、消費者の目を狂わす情報が流されてしているのか。
欧米のForgedアイアンは、角度調整可能な[カーボンスティール鍛造アイアン]のワンタイプだけである。日本のForgedアイアンには、欧米基準角度調整可能な[軟鉄鍛造アイアン]角度調整不可能な[軟鉄鍛造アイアン][軟鉄鋳造アイアン]と、非常に紛らわしい3タイプの商品が流通している。
問題は広告コピーにある。例えば、角度調整不可能な[軟鉄鍛造アイアン]は、アイアン本体は[軟鉄鍛造]であるがクラブヘッドのネック[ホーゼル部]がチタンやステンレス鋼など曲げ加工できない素材が使用されている。メーカーの広告コピーは、あたかも角度調整が可能なような錯覚させる[商品説明]がおこなわれている。こうした情報操作体質に問題がある。

この[素材]の問題は、消費者が情報収集に注意を払えば避けることが出来る。
ところが、[ロフト角の精度]は幾ら注意しても避けることの出来ない問題を含んでいる。ロフト角の問題は、メーカー表示ロフトとリアルロフトの「誤差」にある。
欧米はアイアン・フィティングが普及している為、表示ロフトとリアルロフトの「誤差」があっても大きな問題が発生しない。基本的にライ角度・ロフト角の調整可能な[軟鉄鍛造・ソフトステンレス]を選択することで問題解決に結び付けている。
一方、日本には距離が打ち分けられないアイアン」の問題を抱えている。アイアンロフト角チェックすれば、「ロフト角の差のバラつきが1.5~7度」の誤差があるのが一般化している。
これだけの誤差があり、角度調整が不可能なアイアンを使用すれば[飛距離の安定度]を期待することは出来ない。幾ら[飛ぶアイアン]の宣伝情報を信頼して購入しても、実態が角度調整が不可能な製品であれば「飛ばないアイアン」を手にすることになる。これが「飛ぶアイアン」の実態である。こうした情報に踊らされない為には、欧米同様にアイアン・フィティングの重要性を理解する必要がある。