2011年12月31日土曜日

「優しいクラブは上達しない」と言う神話の話

バランスの取れた「心技体」があらゆるスポーツ上達の鍵であることは、異論の無いことだろう。相撲やサッカーであれば「精神力・技術力・身体能力」の差が優劣を決めることになる。しかし、ゴルフは「心技体」だけで無くメンタルの強靭さと「道具力」が求められるスポーツと言われている。ところが、短絡的なバックスイングのトップの位置とか。ダウンスイングの手の動きなど技術論」ばかりが議論されている。

「技術論」は説明がしやすく理解しやすいこともあるが、「技術論」にうん蓄を傾けるのが好きな国民性もある。一方「道具論」を語るには、専門的な知識や科学的な根拠(データー)が求められるために一般的に議論は難しく敬遠される傾向にある。
この為、最新テクノロジーを駆使して開発されたゴルフクラブを使いこなすには、それなりのテクニックが必要とする「技術論」が多くの共感を集めている。一見、正論のように聞えるが、プレーへの集中力を高めるだけでなく、高度なテクニカルスキルの習得なくしてゴルフの上達は望めないことになってしまう。

正に、本末転倒である。ゴルフクラブの歴史を紐解けば明らかなように「ゴルフクラブは技術力を補う道具」である。
1800年にドライバーの原型「プレークラブ」が考案されたのも、1850年のヒッコリーシャフトも1891年に「バルジャー・ドライバー」が考案されたのもゴルファーがゴルフを楽しむための改革の結果である。
1922年プロゴルファーのジーン・サラゼンがサンドウエッジを開発したのは、自分のバンカースキルを補うのが目的であった。1965年に開発されたグラスファイバー製「ワンダーシャフト」はアマチュアのためのイノベーションであり、キャビティアイアンもワイドソールも、グースネックも1979年メタルヘッド開発も重量調整型チタンヘッドの開発も全てアマチュアゴルファーのスキル向上を願った先人の知恵の結晶である。

近年の日本ゴルフ界の低迷原因は、デパートの化粧品ショーケースに並ぶような「美しい商品」を是とする商品開発にある。この10年間日本の商品開発は、塗装の仕上がりや細部の仕上げにこだわる商品を[高性能良品]として、販売を伸ばし市場を形成してきた。
欧米では過去に世界の名ゴルフクラブと呼ばれたマクレガーやスポルディング、ピング、キャロウエイの改革者により、歴史に名を残す有数のプレーヤーを輩出してきた。ところが、日本の[愚品開発]思考は高度なテクニカルスキルが必要とされる「軽量ヘッドや長尺ドライバー」の商品化に明け暮れ、ゴルフ人口の減少とゴルフの衰退に拍車をかけている。

ゴルフクラブの開発の本質は[ゴルフを楽しくサポートする道具]にある。世界の潮流はこの方向に向っている。しかし、[愚品開発]を遂行する日本のクラブメーカーは、「技術論」を隠れ蓑に「優しいクラブは上達しない」とする風評を流布している。
アジアの中で韓国勢の台頭は著しく、男女プロゴルファーのレベルは欧米に継ぐ第3勢力の位置を固めつつある。反対に日本は世界ゴルフ界の3等国に成り下がったしまった。このまま[愚品開発]を続ければ、日本のゴルフクラブメーカーは携帯電話や家電製品のように近年中に韓国製品に取って変られることになるだろう。

高スキルの熟練者に適した[道具]もあれば、未熟なスキルを補佐する[道具]もある。
今、ゴルファーに求められるのは、「スキルが先か。道具が先か」のCatch 22思考に囚われるのでは無く、適正な[道具]を判別する直観力と明確な判断基準である。
欧米とのイノベーション競争を放棄し「ゴルフクラブの本質」の追及を忘れた日本のゴルフ界に未来はあるのだろうか。

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