2011年11月4日金曜日

[エンジン神話]の話


「シャフトはゴルフクラブのエンジンである」
シャフト性能をエンジンに喩えた「神話」がある。果たして、シャフトにパワーを生み出す能力があるのだろうか。

エンジンの能力差は、容量や馬力の大きさにより明確に判断できる。ところが、シャフト性能は明確な判断基準が存在しない。冷静にシャフト性能を判断すれば、動力機関のような能力が存在しないことは明らかである。個々のゴルファーの身体能力や体力により生み出されたパワーは、ゴルファーの手から[シャフト~クラブヘッド~ゴルフボール]に伝達される。シャフト能力を強いて言えば、パワー(HS速度)を生み出す働きより、パワーを伝達するトランスミッション機能だろう。
「シャフトはエンジンである」と信奉する人は、「シャフトが僕のゴルフにこれだけの違いをもたらしたのなら、全てのゴルファーに重要な要素である」と考える。本当に改良が認められたのだろうか。元々不適切なクラブ調整がシャフト交換により、適正に調整されたことが要因だろう。

米国PGAは、[シャフト]のスイング動作に対する影響度に関する工学的見地に基づく科学的な検証を発表した。スイングに与える影響度のNO.1要素に「シャフト重量」を挙げている。シャフト重量は、ゴルフクラブの総重量とヘッドの重量選択に非常に大きな影響を与えると指摘している。
軽量ゴルフクラブの使用により大半のゴルファーにヘッドスピードの上昇が見られたが、ミスヒット率(オフセンターヒット)の著しい増加が計測された。「タイミングとテンポ」が保てる[適性重量のクラブ]を選択した時、ボールセンターへの[命中率(ミート率)と飛距離UP]の改善が計測された。実験結果では、飛距離の伸び率はヘッドスピードの上昇より、[ミート率]を高める方が効果が上がることが実証された。

シャフト「フレックスとベンドポイント」打ち出し角スピン量の影響度に関しても検証された。
検証結果は、シャフトを操作できる高スキルの一部のゴルファー(プロレベル)に限り、打ち出し角スピン量の影響が確認できたが、その影響度は非常に僅かであることが判明した。ダウンスイング始動時に手首のコックの返しの早い大半のアマチュアゴルファーには[打ち出し角やスピン量]への影響変化は全く見られなかったと報告している。

現在、あたかも[高価格シャフト]を使用すれば、適正な[打ち出し角や[スピン量が得られるような宣伝が行われている。http://ustmamiya.jp/brand/attas.html#pl06

洗練された宣伝文句は、最新の高価格シャフト($300~$500)を購入さえすれば「高打ち出し角」や「低スピン量」が実現する錯覚を与えている。オブラートに包まれた甘い表面的な部分情報を流し、全体像を歪める「情報操作」が当然のように行われている。日本人はマスメディアや大手企業の情報に疑いを持たない習性があり、こうした悪徳商法が横行している。欧米では見られない現象である。自己判断する[知識と情報力]が求められる時代であることを認識することが重要だろう。


現時点シャフトはロフト角(打ち出し角)を変化させる性能がないことは明らかにされている。
クラブ制作のエキスパートは、「飛距離UPと安定度」を求める時に重要なことはスイングをサポートするクラブを手にすること」と語っている。軽過ぎるクラブはHSが速くなるがスイングの安定度に問題が起り、重過ぎるクラブはスイングのテンポ、バランスに問題が生じる。と指摘している。

この問題点を解決するシャフト選択の基本条件は、
1)シャフト重量の選択
2)シャフトのベンド・プロファイルの選択(シャフトしなり度/調子の選択)
3)シャフトの硬さの選択(フレックス)
4)シャフトのトルクの選択(捩れ/硬さの選択)
5)シャフト重量の配分バランス
将来的にコンピュターチップの内蔵されたシャフトが開発されれば「魔力」を秘めたシャフトも誕生するだろう。現時点で重要なことは、高価格シャフトの宣伝に一喜一憂するのでなくシャフト選択の基本条件]を検証することだろう。