2011年3月4日金曜日

アメリカのスポーツ心理学者から学ぶ 2

マッスル・メモリーの話
 スポーツ心理学は、「自信を持つこと」と「不安を解消すること」の重要さを教えている。
スライス病の[恐怖心や不安な気持ち]を乗り越える為、練習場で闇雲にボールを打っている姿を時々見掛ける。
「やはり球を打たないと、身体が忘れてしまう。一日30分でもよいからボールを打つことを心掛けよう。そうしないと、進歩がない。間が空くと、また一から出直さないといけない」と言う人が居る。

日本には「練習とは鍛練である。同じ動きの繰り返し。愚と鈍と根気の練習が鍛練だ。筋肉にスイングの動きを記憶させるのが素振りの効用である。鍛錬を繰り返すことで、筋肉はスイングの動きを覚える」と、指導する指導者が沢山居る。そして、「筋肉が動きを覚えている[muscle memory]は3~5日間と言われ、筋肉に負荷をかけて、その動きが正確に反復できるのは、せいぜい3時間以内と言われている」
また、「一度鍛えた筋力(マッスル)には記憶能力があり、短期間で復元することが可能である」と、こんな記述も眼にする。

本当に、筋肉は短時間でも「記憶」する能力があるのだろうか。医学的に検証されているのか?

医学的にも科学的にも筋肉を鍛えることによって、「筋肉が記憶力」を有することは実証されていない。これからも実証されることは無い。確かに、一度鍛えた筋力(マッスル)は二度目は短期間で回復することは実証されている。しかし、「筋肉の記憶力」によるものではない。
MuscleフィトネスのエキスパートSandra Prior女史一度鍛えられた筋力が二度目に短期間で回復することは科学的に解明されていないとしながら、「一度目の筋力トレーニングの記憶が「脳」に蓄積され、学習効果により二度目はより効率的なトレーニングを無意識の内に行っている。あるいは、筋肉の周りの血液循環機能が一度目のトレーニングにより活性化され、二度目の時に血液循環機能が活性化されやすくなっているためだろう。と科学者は想定している」と解説している。

スポーツ心理学者Chris Dorris博士(*)は、
"muscle memory"は、身体の動きを記憶する表現法であり、意味する所は“learning” ”motor memory“と同義語である。筋肉の働きを脳に記憶させる働き掛けの手段である」
(*クリス・ドリス博士:著書「The Mental Game」を執筆し、米国オリンピックチームのメンタルトレナーとして活躍中)
 
 画像をクリックすると動画が再生されます)
英国のスポーツ心理学者Larry W. McDanie博士は、
「Muscle memory あるいはEngram(*)は反復練習のテクニックにより、脳神経を刺激し記憶させるプロセスである」(*Engram/エングラム:脳内に学習によって蓄えられていると仮定される記憶の痕跡)
「マッスル・メモリー」とは[筋肉が記憶]することではなく、反復練習のテクニックにより、脳神経を刺激し記憶させる訓練法のひとつである。
大脳には「条件反射」と言う神経系の基本的な働きがある。新しい行動を繰り返すことにより、全く新しい神経の結びつきが大脳の中に生まれてくる。反復練習のテクニックとは、繰り返すことにより脳神経を刺激し記憶させる働きである
脳の記憶機能は二つに大別され、① 感覚や運動のように言葉に表せないモノ② 知識やエピソードのように言葉に表せるモノ。簡単に言えば前者が「身体で憶える記憶」であり後者が「頭で憶える記憶」である。

ハーバード大学メディカルスクール脳科学研究室のSara Lazar博士は、機能の働きのひとつに粗大運動能力(Gross motor coordination)がある。赤ん坊の脳の発育と共に発達する[這う、歩く、走る、ジャンプ]などの運動能力。この運動能力が一度発達すると、身体は無意識(潜在意識)に反応するようになる」
赤ん坊が歩くことを覚えれば[足の筋肉]は無意識に働き、話し言葉を覚えれば[顎の筋肉]は無意識に機能する。例えば、バイオリン奏者やピアニストは、次の音符を頭で考えることなく、指先を巧みに動かし、流れるような滑らかさで音楽を演奏する。指先の筋肉が音楽を記憶している訳ではなく、頭の中に記憶された音符を瞬時に指先に伝え、無意識の内に自動的に演奏している。
Sara Lazar博士は、「こうした行動や技術に直結した記憶を「非陳述記憶」と呼び。この記憶を司っているのが「小脳」である。「小脳」は、記憶・学習・練習を繰り返すうちに失敗を減らし、無意識に上手に出来るようにする働きがある。これが水泳や自転車のように身体で憶えた事は忘れない運動記憶の原理である」と語っている。

ゴルフスイングの動作を効果的に記憶する方法は、
(1)正しいスイング動作を分析し、大脳に「正しいスイングモデルの記憶」を刻み込む。
(2)ゆっくりしたスイング動作を繰り返し(反復練習)大脳の[スイングモデル]を「小脳」に記憶させる。
(3)スイングをイメージする方法を習得する。

つまり正しい練習法とは、不安を解消するために闇雲にボールを打つことではない。日本の指導者達は、"muscle memory"と言う言葉を直訳理解し大きな誤解をしている。誤解の上に構築されたレッスン法を習得しても、ゴルフが上達することは無い。

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